弓道の伸び合いと詰め合いとは
伸び合いとは
伸び合いとは矢の長さ(矢束)いっぱいに引き収めたあと、詰め合いを行うにしたがって萎縮することなく気力を充実させて上下左右に伸びることを言います。
決して矢束以上に引っ張るのではなく、心気の充実をはかって離れにおいての気合の発動を促すものです。
腕を曲げる時に使用される筋肉を中心に引き分けると伸びられないので、背と両腕の伸筋群を使うことで伸び合いをします。
縦横十文字を軸として心を安定にし、気力の充実によって気合いの発動を促して離れを至らせなければいけません。
詰め合いとは
詰合いとは会において筋骨にあった縦横十文字を正しく形作り、体の縦筋と両足底、腰、両肩の横線との十文字である三重十文字をつくりあげることが大切です。
引き分けてきた力を背中で受け止めて、大して力を使わないでも縮まずに保っていられる状態になることで、各関節が緩まないようにくさびを打つ心もちで力を保たなければなりません。
詰め合いには五部の詰めや八部の詰めがあります。
五部の詰め
◎ 押手の詰め
押手(弓手)は中押しで角見を効かせて脈どころから押し切ります。
◎ 勝手の詰め
親指は真っ直ぐにして勝手(妻手)を程良く捻り勝手の脈どころから矢筋に詰めます。
◎ 押手の肩の詰め
勝手の肩とともに矢筋と平行にして弓矢と一体になり骨の関節を合わせるように詰めます。
◎ 勝手の肩の詰め
押手の肩とともに矢筋と平行にして弓矢と一体になり骨の関節を合わせるように詰めます。
◎ 胸の詰め
胸の中筋を開くとともに背中の肩甲骨を閉じ合わせるように詰めます。
胸の詰めは詰めるという心持ちよりもむしろ左右に開き延びる心持ちを多く必要としますが、延びすぎればくさびが外れてしまうので逆効果になります。
五部の詰めのうち注意が必要なのは左肩の関節の働きです。
弓を引き収めたときの人体の中央部はだいたい左肩になるので、左肩が受ける抵抗が最も多くなります。
また、肩は左右上下前後に動き筋力の用い方で変動しやすいので、弓を引く過程で左肩のくさびについて注意を払うことが必要です。
五部の緩み
五部の詰めとは反対の意味で五部の緩みがあります。
どれかひとつだけでも緩むと緩み離れを引き起こす元になります。
✘ 押手の緩み
✘ 勝手の緩み
✘ 押手の肩の緩み
✘ 勝手の肩の緩み
✘ 胸の中筋の緩み
八部の詰め
五部の詰めに3か所を加えて骨法に従って詰め合います。
◎ 足の詰め
◎ 腰の詰め
◎ 腹の詰め
両足の詰めは膝を少し内側にしめることでくさびを打ち込む感覚になります。
これにより、腰の位置が両足の中央に安定するようになります。
また、両脚の力の入れ方で横軸の運動を変えることができるとし、左足、右足の力の入れ方を左右少し変えることが説明されています。
左足は親指に力を入れ、右足は踵に力を入れるようにします。
これは、左足は親指を踏むことで弓手を強くし、右足の踵を踏むことで、妻手に多くの力が入り胴造りが崩れるのを防ぐためです。
腰の詰めとはお尻を少し後方に引いて、丹田を大地の方へ向かわせて上半身をくつろがせることです。
以上の8カ所をくさびを打ち込んだように少しも隙がないように締め合わせることが八部の詰め、また総部の詰めと説明されています。
弓道の伸び合いと詰め合いの注意点
伸び合いは会で弓の力に負けない力で張り合います。
緩まずに無理な力をかけずに伸び合えるようにしていきましょう。
的にこだわったり、技の欠点などに気を奪われて堅くなったりすると伸び合いをしにくくなってしまいます。
詰め合いも毎回弓を引くたびに射の中でそれぞれ確認していては意識がそこに集中してしまって射が滞ってしまいます。
練習を繰り返す中で良い射の時の各部所の感覚を覚えておいて、悪い部分を修正していけるようにしましょう。
会において重要なことは詰め合いと伸び合いです。
射を先生や周りの人に見てもらったり、鏡を見て確認したり、動画を撮影したりしてチェックしながら練習していきましょう。
それを行射の時の身体の感覚と照らし合わせながら修正し、正射を出来るようにしていきましょう。
弓道の伸び合いと詰め合いのまとめ
伸び合いでは矢束いっぱいに引き収めたあと、気力を充実させて上下左右に伸びます。
詰め合いでは会で縦横十文字と三重十文字を正しくつくりあげ、五部そして八部の部所を詰めていきます。
しっかり伸び合って確実に詰め合うことが正しい会の形になり、正射へとつながります。
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